1年、100年

建築は人と人が一緒に居ることができる、一緒に居たくなる、そんな魅力ある場所になりえますが、新型コロナウィルス問題が長引く中、その意味について改めて考える機会が増えています。

人と人との距離、集合の密度、人と物の接触の仕方、空気の質など、デザインとして考えられることは多く、また生活とは?住居とは?仕事場とは?移動とは?集まるとは?というような多くの問いを含んでいます。

日本建築学会では空気調和・衛生工学会と共に、昨年3月の段階で換気に関する緊急談話を発表していました。また昨年の一級建築士の設計製図試験では、インフルエンザ・ノロウィルス対策が求められたそうです。

およそ100年前には、当時の結核という問題に対して、オープン・エア・スクールやサナトリウムといった、陽光に満ち溢れた新しい建築が計画されました。健康で衛生的な環境をつくりたいという思いと、鉄筋コンクリートラーメン構造という技術が結実した、すばらしい空間も生まれました。

快適だとされる指標は時代によって異なるものだと思います。この1年でも、私たちが快適だと感じる空間は少し変わったかもしれません。ただ、100年前の建築を体験して感動することがあるように、普遍的と言える価値も、生み出すことができます。どちらの探求も続けて行きたいと思います。

(小川泰輝)